シャネル優美なる鋼鉄。ラグジュアリースポーツウォッチのクロニクル

ジャンル優美なる鋼鉄。ラグジュアリースポーツウォッチのクロニクル


1970年代に誕生し、現在ではジャンルとして確立された、ラグジュアリースポーツウォッチ。“ラグスポ”と通称されるこの腕時計は、どのような歴史をたどってきたのか? 『クロノス日本版』97号に掲載した“ラグスポ”の再定義を、webChronosでも紹介する。

 なぜラグジュアリースポーツウォッチは誕生したのか? そして今後の展望は? 世界的な時計ジャーナリスト、ギズベルト・L・ブルーナーが長年の取材に基づき、ラグジュアリースポーツの今と昔を語る。

 1970年代に起きた出来事は、それまで時計産業界に長らく君臨し続けてきたスイスがぎょっと焦り驚いたことの象徴となった。クォーツ式ムーブメントの登場により、それまで盤石の経営をしていた各時計メーカーは根元から揺さぶられることとなったのだ。ことのほか反響が大きかったのは腕時計の分野で、クォーツムーブメントを搭載した製品は目覚ましいほどの好評を得たのである。機械式時計の価格はほとんど毎週のように下がる一方だった。ひとつの技術改革が、それまでの世界にいた者たちを追い立てていったのだ。少なくないメーカーが閉業に至った。この時期に業界から突然消えてしまったメーカーはいくつもある。生き残った既存メーカーも失速は免れなかったが、業界がエレクトロニクスに傾く中、真っ向から反対表明を打ち出した。その切り札となったのがケースとブレスレットをステンレススティールでそろえたラグジュアリーな機械式ムーブメント搭載スポーツウォッチだったのだ。